コラム〔山本編〕
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vol.2 粧艶質本傾城
    〜化粧をした貴女の美しさは国を滅ぼすほどだ〜
作  山本 洋左右

 テレビの仕事をする喜びの一つは大勢の美女達と会える事だ。
各局共、女性アナの採用については1に美貌、2に気品、3、4が無くて5に気立て、を暗黙の条件にしている。
それでも局毎に同じ様なタイプの女性が採用されていて、それが局のイメージとも重なっている。

 女性アナが世間の注目を集めたのは80年代半ば、先駆けはCXだった。
“テレビは楽しさが一番”を番組作りにした同局は80年代に入るとタレントに匹敵する美貌の女性アナを次々に採用し、ニュース、バラエティとジャンルを越えて使いまくり、局のイメージアップに成功した。

 反響は同業他局に留まらず新聞、週刊誌も特集を組み、それがより多くの視聴者の注目を集める結果となった。
 今は結婚退社してフリーとなったYアナは物腰が優しく、育ちの良さに満ちていたがそれでいて嫌味な所は全くなかった。お笑いタレントとの交際が写真誌で報じられたりしたが、商社マンと結婚したのは、やはり育った家庭の影響だろう。

 美人アナのCXと騒がれているのを他局も黙ってはいない。NTVは若さと可愛いさのある女性アナを採用し、局アナのタレント化を狙った。
Nアナは愛くるしさに似合わぬ活発な性格で若者の人気を集め、早朝の生放送にはカメラを持った多数の追っかけまで現われる程だった。
また、同期のSアナは、Nアナほど派手さはないものの何故か放って置けないような気を男に抱かせる様な雰囲気を持っていた。
酒を飲んだ時などは、むしろNアナよりも艶っぽかった。それが自然なだけに退社が惜しまれた。

 CX、NTVに比べるとTBSの女性アナは固すぎる。勉強はできる、スポーツもこなし生徒委員も努める学校の模範生、でも同級生の男には相手にされない。
それが証拠におしゃれが下手。何を贅沢な!と怒られそうだが
「俺は遠慮しとく…」と言ってしまいそうな良家の子女って感じの女性アナばかり。これって採用する局の上層部のセンスの問題でもある。
決して、彼女達の責任ではない。
 そんな中、唯一、今はフリーとなったMアナは美貌と知性を持った女性である。番組中は決して出しゃばらず、無駄口を言わず、歳下でも男性出演者を立てる気配りは一緒に仕事をしていて本当に感心したものである。それでいて普段は自らミーハーと称しそんな世間話にも加わる、ごく普通の女性である。
 Mアナのエピソードをひとつ。
故ダイアナ妃に質問した時、Mアナの英語の美しさにダイアナ妃が質問を忘れ、
思わず「貴方、どこで英語を覚えたの?」と聞き返したのだった。
バイリンガルの女子アナは数多く居るがMアナの英語は発音の美しさに品のある言葉を自在に使える知性が加わっているのだ。
これ以外にも気難しいハリウッドの俳優がMアナの英語に感激して気分良くインタビューに応じたと言う事もあった。
 こんなにMアナの事を記したのは数多くの女子アナの中で最も素敵だと思っているからである。10年以上こういう女性と仕事ができてテレビってやっぱりいいなと思うのである。