コラム〔山本編〕
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vol.9 地震雲を見て予言 
作  山本 洋左右
新潟県中越地震のおきる5日前の18日、
自宅近くで地震雲をはっきりと確認した。
その日、世田谷の実家から歩いて自宅へ帰る途中、
空の様子に違和感を感じ立ち止まった。
夕刻、秋晴れの空に太い3本の白雲が長く伸びている。
方角は、東南から西北で、3本の雲に沿って
細かい鱗の様な雲があった。
しかし、雲はこれだけでそれ以外は、典型的な秋の夕空だったのである。
飛行機雲とは、高さも模様もまるで違う。
そのとき、私は、突然阪神大震災の前に、
奈良で撮影された地震雲の写真を思い出した。
自宅に戻って妻に”地震雲を見た近いうちに大きな地震があるぞ”と言うと、
地震恐怖症の妻は、カレンダーの18日の欄に”地震雲”と書き込んだ。
後から分かったのだが、父も自宅2階からこの雲を見ていた。
太平洋戦争中、海軍航空隊のパイロットだった父は、
一目で飛行機雲ではないことが分かり、他の空の様子から、
地震雲ではないかと思ったそうである。
更に、知り合いのタクシーの運転手もこの雲を見ていて、
不思議な感じがしたと言う。
10月18日のこの雲を見た人は、意外と多いのではないだろうか?
偶然とは恐ろしいもので、この雲のことを
局で仲間に話したのが18日の朝だった。

そして大地震は起こった。
夜の番組は次々と地震特番に切り替わっていった。
夜、被害の情報が少しずつしか入ってこない苛立たしさを
抑えながら本番に立ち会った。
しかし、地震報道の際いつも腹立たしい思いをすることがある。
それは、専門家のコメントが、なんの役にも立たないからだ。
新潟県中越地方で、大地震が起きることなどほとんどの人は知らなかった。
そのことを問うと、専門家の大学教授は、
”あそこは、地震の多発地帯だ”と言う。
別の専門家は、今回の地震は、過去200年近く
大地震が起きていない”空白域”で起きたと言う。
つまり、”いつ起きてもおかしくない”と言う一方で、”予測困難”とも言う。
この人たちの見解は、無責任すぎる。
被災者の前で、テレビと同じコメントを言ってみるがいい、
どんな罵声が返ってくる事だろうか。
東大地震研だの地震予知連だのは、権威を纏っているだけで
国民の安全にとっては、害である。

地震に関する情報を我々の手に取り戻す!
関東大震災の前、荒川上流で、数千尾の鰻が石の間から
姿を現し瀬が真っ黒になり川漁師を不気味がらせた、と聞いた。
中国唐山の大地震の前、地面で飼育していた数百羽の鶏が樹上や、
屋根に飛び上がり降りてこなかったと言う。
このほか、井戸が急に枯れた、とか 
無数のアリが黒い筋を幾重にも作りながら移動して行った。
そして、赤い月や、地震雲の目撃例がある。
物理的なデータだけに頼るのではなく、
これからは自然界の異常現象も併せて積極的に
警戒情報を公表すべきではないだろうか、
専門用語と実感のない数字だけを言われるより、
私は、例え外れても納得するだろう。