コラム〔山本編〕
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vol.15 中国で有名日本人
作  山本 洋左右
日本のマスコミが伝えない中国
ここでは、中国のテレビに見る反日を紹介する。

鬼の日本、紅軍の奮闘?

中国のテレビは、中央電視台を始め、各省、市の
電視台全てが共産党中央宣伝部の統制監視下に
置かれている。
従って、全国ニュースは全局中央電視台と同じ
ニュースを一字一句変えずに伝えなければならない。
その後の地元ニュースについても
各電視台内部の検閲をパスしなければならない。
もちろん、歌番組やクイズ番組も日本と同じように
あるが、それらはある日突然無くなる危うさを
背負っている。
私は、数年前上海電視台で偶然
この検閲を目撃した事があった。
若手ディレクターが、漫画ブームを取材したテープを
老検閲官に見せて許可を得るところだった。
穏やかな表情ながら、保守的な雰囲気に満ちた
検閲官の老人は、映像の2,3箇所と原稿の
数箇所の訂正を指示した。
若手ディレクターは、一言も発せずテープと原稿を
持って表情一つ変えずに部屋を出て行った。
一緒に居た中国人に尋ねると
老検閲官は、映像に出てくる漫画が
一目で日本のものと分かるので差し替えろ、
”すごい売れ行きだ”と言う本屋の店員の音は使うな
締めのコメントは、漫画に批判的でなければならない。

今同じ事が行われているかどうかは分からない。
しかし、報道の自由、政権批判の自由、
番組企画の自由が無い事は、今も変わらない。

そんな中国で、建国50周年の1999年前後から
戦争愛国ドラマが中央電視台を始め
各局で競うように製作された。
ストーリーは、大体次の通りだ。
日本軍が、町を攻撃して国民党軍を負かす。
国民党軍は、日本軍の手下に成り下がり
人民に軽蔑される。
町を占領した日本軍は、国民党軍を従え、
今度は、農村を襲う。
そこでの残虐非道に怒った農民は、
紅軍と共に立ち上がり、様々なゲリラ戦術で
日本軍に勝利すると言う内容である。

松本、亀田は、鬼日本の代名詞?

ドラマに登場する日本軍は、十数名の部隊なのだが、
たいていの場合、隊長は松本少尉、部下が亀田軍曹
と言う名前なのだ。
日本人が、松本、亀田を演じているドラマと
中国人が演じているドラマも見たが、
いずれも松本少尉は、ちょび髭を生やした千葉真一、
亀田軍曹は、川谷拓三や志賀勝と言った
ピラニア軍団系の凄みのある役者だった。
二人の役もまた、同じように際立っている。
松本少尉の決まり文句は、
「捕まえろ!」、「殺れ!」と短い台詞で農民を威嚇する。
これに対し、亀田軍曹は、部下を率いて
農家に押し入り、農民に向かって
「みーし!」「みーし!」と連呼し、農民に暴力を振るう。
この「みーし」とは、実は、「飯」のことである。

つまり、松本は少尉は、情け容赦なく中国人を殺す
冷酷無比な日本軍の象徴であり、
亀田軍曹は、略奪の限りを繰り返す日本軍の
象徴であった。
しかし、何故松本と亀田なのか?
何人もの中国の朋友に聞いても分からない。
とにかく、紅軍と共産党に都合の良い内容なので
まともに論じるレベルのドラマではない。
しかし、松本さんと亀田さんには迷惑な事である。
もし、同姓のお二人が、中国に行って
自己紹介した時に、相手がなにやらニヤニヤしたら、
ドラマのせいだと思ってください。
但し、それで松本さんや亀田さんを非難するような
愚かな大人はいないと思います。