コラム〔山本編〕
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vol.16 どたばた劇のつけ
作  山本 洋左右

 見事に失敗した反日デモ
その後を何も伝えないマスコミに代わって
中国で今、何が起きているか紹介しよう。

  寿命が来た共産党
 
まず、4月後半に入ってからの共産党の慌てぶりについて
5月4日を前に、反日デモの再現を恐れた党は、
暴力犯の摘発や反日サイトの閉鎖を進める一方で
デモに参加したい者は、登録するように呼びかけた。
これは、再びデモが暴力化した場合、
すぐに身元を割り出し摘発するため公安局が考えた
頭の悪い作戦だった。

案の定、登録する者など誰もいない。
共産党中枢に、あの五四運動の悪夢が広がった。
89年5月4日、天安門広場に集まった大衆は、
五四運動70周年のアピールと共に愛国を訴え、
やがてそれは、愛国民主と言う自由を求める叫びとなり、
流血の天安門事件となったのである。
5月4日のデモは、絶対に阻止せねばならない。
公安局は、形振り構わぬ手段に出た。

  
何がなんでも日本を守れ!
 
4月下旬、全国の主要都市にある通達が出た。
通達は、都市の区域に点在する企業宛で、
5月1日から4日に予想されるデモに対する警備の為、
各企業から1名出して、デモの警備訓練を受けるように
とのないようだった。
上海で警備の指名を受けた者の話によると、
デモ隊が、日本企業や日本料理店を襲った場合に備えて
デモ隊を押し返し企業や店を体を張って守る為、
盾を使ったりデモ隊を蹴り返す訓練を公安局で受けたと言う。
何のことは無い、国連常任理事国入りを阻止する為、
教科書や靖国問題に怒った自然発生的なデモに
仕立て上げたはずだったが、
政権の思惑を超えた暴力に発展してしまった。
この暴力については、
胡体制を追い落とそうとする勢力が仕掛けたとの見方が
広がっている。
危機感を抱いた胡政権は、民間人を動員して
日本企業を守ろうとしたのだ。
これには、もうひとつの狙いがあった。
公安警察を大量動員して、万一流血の事態となれば、
天安門事件の再来となる恐れがある。
そうなれば、世界中の非難を浴びるのは必至で、
五輪、万博の中止、胡政権の崩壊と言う
悪夢が現実となる。
民間人を日本企業の前に立たせるのは、
こうした悪夢を回避する為の方法だった。

  
市場に聞け!
 
とりあえずデモは起こらなかった。
警備員に指名された企業の中国人は、
自宅待機のままで、日本企業の前に立つことは無かった。
しかし、暴力デモの被害は、中国人にも巡ってきた。
黄金週間が終わった5月2週、上海と北京で
不動産価格が、30%前後暴落した。
外国企業の投資控えも出て来た。
上海の「解放日報」は、反日デモは上海にダメージを
与えるのが狙いだった、と暗に北京の党中央を非難する
社説を掲載したが、1日で削除されてしまうと言う
権力闘争を匂わせる動きも起きている。

反日運動が、何を目的にしているのか?
その答えは、誰よりも市場が正確に出すであろう。