コラム〔山本編〕
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vol.18 中国が靖国に拘る訳
作  山本 洋左右
靖国、戦後は終わらない

靖国参拝、A級戦犯、日中間で、何故この問題が蒸し返されるのか 疑問に思う人が多い。反日デモ、副首相の会談キャンセルを見て
中国の態度に傲慢さを感じ、中国と言う存在自体嫌いになった人も
急増している。中国共産党の最大の課題は、台湾統一なのだが
日本は、小泉首相の靖国参拝が、大問題とされている為、このコラム でも1回だけこの問題について触れておきたいと思う。
戦後生まれが過半数となる今の日本で靖国問題を理解出来る人は 少ない。これは、戦中世代と戦後世代がこの問題を
真剣に解決しようとしなかったつけでもある。
靖国は、ナショナルな問題であり、インタナショナルな問題である。
これを克服出来なければ、私たちは隣国と上手くやって行けないかも 知れない。靖国問題の解決は、妥協ではなく自らの決断で行い
その決定に内政干渉の余地を与えない事が
求められているのではないだろうか?

大日本帝国、靖国神社

靖国神社は、136年前に創建された神道の歴史としては
極浅い神社である。
その靖国神社が何故、国際的な問題となるのか?
この問いこそが、靖国が他の神社とはその存在を
全く異にしている事の証左である。

靖国には、246万人の御霊が祀られている。
その全ては、戦争で死んだ兵士と軍属である。
戊辰戦争、西南戦争から日清、日露、第一次大戦、
日中戦争、第二次大戦、
いやそれだけではない、朝鮮や台湾で起きた反日運動の
弾圧の際死んだ兵士も祀られているのである。

靖国には、もうひとつ際立った性格がある。
この神社は、祀られている246万全ての御霊を神としている。
この中には、14名のA級戦犯も含まれている。
靖国は、日本の為戦死した246万を神として祀っているのである。

明治以降の日本は、戦争による領土拡張の歴史だった。
その為の戦争で亡くなった兵士を讃え、祀ることが
大日本帝国の責任であり、その場が靖国神社だった。
戦死者を神と位置付ける事で兵士の補充を可能にした
側面を考慮すれば、靖国は、特別な神社だった。
事実、他の神社は内務省の管轄だったが、
靖国は、陸海軍の管轄だった。

誤解、嘘?首相の認識

靖国参拝について、小泉首相は
「戦争で死んだ人々を追悼し、平和を願う為」と繰り返す。
しかし、この言葉には嘘、若しくは誤解がある。
靖国は、戦死者を顕彰する場であって、追悼する場ではない。

噛み砕いていえば、靖国は、祀っている戦死者を
”お国の為に良く戦った!”と誉め讃える儀式を行う場所であって、
” お気の毒です、同情を禁じえません”と追悼する場ではないのだ。
靖国は、246万の御霊を神と讃える事によって、
明治以降の戦争を聖戦と位置付け、戦死者と遺族に
名誉を与えて、国の為に戦う事を意義付けた。

これを、中国や韓国の側から見ると
靖国神社は、自分たちを侵略した戦争を聖戦としている。
東京裁判で有罪となったA級戦犯も聖戦を戦った神として祀っている。
そこに、日本の指導者が参拝する事は、戦犯を讃え、
戦争を肯定しているに等しい、と映る。

中国や韓国は、歴代総理の靖国参拝については、
文句を言わなかった。
A級戦犯が合祀された1978年も批判しなかった。
この扱いは、あくまで神社と遺族、そして日本国民の問題と
していたのである。
しかし、1985年”戦後政治の総決算”を掲げて、
中曽根首相が、公式参拝すると両国は、激しく反発した。

”神として祀られたA級戦犯を首相が讃えに行った”

A級戦犯は、東京裁判で「平和に対する罪」で起訴され
25名が有罪となり、7名が処刑、残りは有罪となった。
しかし、裁判の在り方に疑問が多かったのも事実で
サンフランシスコ講和条約で、A級戦犯を認めたにも拘らず
その後、釈放運動が全国で湧き上がり、有罪の18名は
順次釈放となった。
東西冷戦、朝鮮戦争など日本を取り巻く緊張情勢と
アメリカの戦略的判断の結果だった。

しかし、東京裁判の結果を受け入れた以上
日本の指導者が靖国を参拝する事は、
公人、私人の別なく認められない、と非難する。

これに対し、日本は平和を願う個人の信条で行っている。
にほんは、これまで18回も過去の戦争は、
侵略だったと認めて謝罪している、と反論する。

が、A級戦犯をも神と讃える靖国に首相が参拝し続ける限り
謝罪は信用できない、
この疑念を晴らすのは、行動つまり靖国参拝を
やめる事しかない!と言うのが中韓の主張である。

靖国参拝を止めることは、中韓の圧力に屈する事だと言う
意見があるが、この問題で二度と口出しさせない為に
毅然とした見解と、行動様式を早急に決める時では
ないだろうか。
問題を先送りする事が政治だと嘘吹いてた政治屋の
怠慢と傲慢が、事態を益々悪くしている。