コラム〔山本編〕
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vol.20 政治と嘘 
作  山本 洋左右


雄弁なる嘘の惨禍

嘘も百回言えば、真実に聞こえる。

小泉総理の嘘と強弁にこれ以上惑わされぬ為にも政治家が嘘をつくと、
どのような悲劇を招くのか、現代世界史を思い返してみよう。


1 英国の嘘
第一次大戦終了後、中東では、パレスチナ、ユダヤの民族独立運動が激しさを増していた。
その為、この地域を支配していた英国は、将来にわたる権益を確保しようとして人口多数のアラブ人に1916年国家の建設を認めた。
これに対し、英国内の金融を独占していたユダヤ人財閥が猛反発、さらにアメリカのユダヤ財閥も同調した為、窮地に追い込まれた英国は、翌1917年今度はユダヤ人の祖国建設運動を支持する見解を発表した。
これが世に言う”英国の二枚舌外交”である。

自分たちの信じるユダヤ教が”約束の地”と記したことを盾にパレスチナは自分達の土地とするユダヤ人とアラブ、パレスチナ人はこれ以降、4回の大戦争を繰り返し今日まで90年近く血みどろの戦いを展開している。
英国政府がついた嘘が数十万の死者と400万の難民を生み出している。

英国は、19世紀半ばに清朝に対して茶と絹の代金を銀で支払う事を約束しながら、途中からアヘンに替え、戦争まで仕掛けた前科がある。

2 米国の嘘

1964年ホワイトハウス緊急声明を発表した。
 ”トンキン湾で米海軍がベトナム軍から魚雷攻撃を受けた”
 
フランス敗北後の南ベトナムに軍事援助を続けていた米国は、この声明を機に、本格介入に転じ50万の軍を派遣、その後北ベトナムに対する北爆を開始した。
しかし、トンキン湾事件は、米国の嘘だった。
10年に及ぶ戦争は、5万の死者を出した米国の敗北に終わった。ベトナム側の死傷者は、今もって不明である。

米国の嘘はこれに留まらない。
世界で最も自由な国を標榜するこの国では、1960年代後半まで黒人差別が現存し、バスの中で黒人は白人に席を譲らねばならなかった。
日本との関係でもこの国は、戦勝国の傍若無人ぶりを見せつけた。
極東軍事裁判で、A級戦犯達を”人道に対する罪”で裁いたこの国は、非戦闘地域の広島と長崎に原爆を落とし市民数十万人を殺傷した行為を正当としたのである。

政治家は、何故嘘をつく

嘘も百回言えば真実に聞こえる
  
何故、政治家は嘘をつくのか?

そこには、”国家の現実”と”国民の理想”と言う乖離が
存在するからである。
主権在民の国家が増えるほど嘘をつく政治家も増える。何故か?
民主主義の成熟が、国民の理想を高め政治家の現実を超えようとするからである。
しかし、ここには大きな問題がある。
国家、そして国民と言う概念は、実は幻想にすぎないからである。
政治家が嘘をつけるのも国家と国民の関係が幻想領域だからである。
この考えは誤ちで、個ではなく属する事で国家と国民は一体化する、と政治家は言う。
そういう政治家がどんな困難を国民に強いたのか?
次回は、日本の政治家の嘘を検証しよう。